ヒトの心と行動原理について
今回は、進化心理学における人間の行動原理(子孫繁栄)とマズローの欲求説についてだ。
マズローの欲求説(正式名称は「欲求5段階説」)は、明確な科学的根拠があるわけではない。人間性心理学者であったマズローの直感から生まれた「仮説」に過ぎない。だから最後に、「説」が付くのだ。
マズローによると、人間の欲求は五段の層からなるピラミッド型で説明できる。つまり、土台の欲求を満たせば、その上の欲求を満たそうとし、それが満たされればまたその上の…という具合になっているということだ。
一つ一つ欲求の説明をする前に、進化心理学の話を軽くしたい。
進化心理学とは、進化の過程で作られたヒトの心理を研究する学問である。要は「ヒトの心理状態はその子孫繁栄に有利か不利かで決まる」ことを科学的に証明しようといする学問だ。だから、進化心理学的に言えば、僕たちが持つ感情はすべて、「子孫繁栄」が中心となっているということだ。いわば、僕たちの行動原理は「子孫繁栄」にある。考えること行動することもすべて。
ということが確かである事を前提に、欲求について話していこうと思う。
人間の欲求は、一番下から「生理的欲求」「安全欲求」「所属欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」となっている。
「生理的欲求」とは、性欲睡眠欲食欲といったヒトが生きるのに必要不可欠な物への欲求だ。今世はモノで溢れているからこの基本的な欲求で困ることはないだろう。しかし、性欲に飢えている者が多いのも事実だろう。
「安全欲求」とは、身の安全を確保できることへの欲求だ。これも現代日本においては困る事はないはずだ。自身で選択しない限り、衣服や住居などで安全を確保できる環境は整っているからだ。
ちなみに、これら2つの欲求を満たせないと他人に優しくできないというのが筆者の主張だ。
「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、正直、「衣食」だけでは足りないと考える。ここには他の重要な欲求が欠けているからだ。つまり、「睡眠欲」と「性欲」である。まあこの話は後日、別の記事として書く。
「所属欲求」とは、どこかのコミュニティに属したいという欲求だ。古代から、人は群れることで肉食動物や他の脅威から身を守ってきたことから、納得が行く。
「承認欲求」とは、他者から認められたいという欲求だ。テストで人よりもいい点数を取りたい、よりいい大学に行きたいというのは、多くの場合、この欲求が原動力だろう。
最後に「自己実現欲求」とは、理想の自分になりたいという欲求だ。自分が思い描くような人物になりたいという欲求のことだ。歌が上手くなりたい、あの人のように働きたい。
話は、進化心理学に戻る。
進化心理学的に言えば、人間の行動原理は「子孫繁栄」である。僕たちは「子孫繁栄」という規範に従い生命活動を行なっている。
そうした前提に立った時、下3つまでの欲求はわかる。どれもその生命活動を続けるのに必要だと、直感的にわかる。
だが、上2つの欲求はどうだろう?
なぜ子孫繁栄のために「承認欲求が要るんだ?」
なんで「自己実現欲が必要なんだ?」
もし本当にこれらが必要なら、それは必ず「子孫繁栄」に有利だからである。だから僕たちはそのような欲求をもって生まれてきた。つまり、古来からこのような欲求を持つ個体が子孫を残すことに成功してきたのだ。
次回は、承認欲求と自己実現欲が子孫繁栄とどのように繋がるのかを説明していく。
以上。